The Recommendation from 寅壱 #8 大平龍一
現在開催中の展覧会「The Yellow Portal」にて寅壱とのコラボレーションアイテムを展開している彫刻家、大平龍一氏との対談が実現をした。
大平龍一氏は学生時代から作業着として寅壱の「超超ロング八分(通称2超)」を愛用している。いわゆる鳶装束のド本命である「2超」との出会いなどを起点に、今後の氏の動きなどを語ってもらうという試みだ。
インタビュワー(以下 Q): 今日はよろしくお願いします
大平龍一氏(以下 R): よろしくお願いします。
Q:作業着でよく寅壱の超超ロング八分をよく履いていると聞いたんですが。
R:ええよく履いてます。
Q:なんでまた鳶装束の2超だったんですか?
R:普通にかっこいいからです(笑)
Q:なるほど(笑)
時々セレクトショップのバイヤーさんとかで、「昔、作業現場のバイト先でニッカ履いてました!懐かしい!」なんて会話も時々あるんですけど、大平さんの愛用する「2超」っていわゆる鳶職人の作業着じゃないですか。アルバイト経験で鳶職人っていうのはハードルが高いので、何経由で鳶装束を選んだのかな?と思いまして。
R:大学(東京芸術大学)の彫刻科に入ったときに何か作業着が欲しいなって思って探していて、そのとき先輩が履いてて。結構、僕がいた当時は暴走族上がりの先輩とかもいて、新入生歓迎会のときに先輩が悪ノリして暴走族のノリで旧車と超超ロングでビシッと決めて僕らを歓迎してくれたんです。
Q:え?60年代とか70年代とかそんな昔の話じゃないですよね??
R:2000年代に入ってるんですけど、なんかやばいとこに来ちゃったな?なんて思いましたね当時は。いまはそんなこと無いんじゃないかなと思うんですけど、逆に、先輩たちを「かっこいいな」と思って自分も超超ロングを作業着に決めました。大学時代の9年間、ずっと2超履いてましたし、今もです。
Q:なかなか他には無いスタートですね。
R:履くなら「寅壱」だろ?って思って買いに行ったんですけど、高くて買えなかったんですよね。仕方ないんで最初はパチモンのブランドで1,500円くらいの超超ロングを買いました。でもすぐに破けちゃって…。で、頑張ってお金貯めて寅壱の超超ロング買いました。
Q:ちなみに色はなにを選んだんですか?
R:紺ですね。
Q:ちなみに鳶職人さんの間でも、紺や濃紺はヒエラルキー上は結構高め(最高)らしいですよ。
R:笑。でも自分的には色がそんなに派手じゃなくても、2超はカタチ自体が主張があってかっこいいので。
Q:ちなみに、他の学生とかはどんなの着ていたんですか?
R:ツナギとかも多かったですね。
Q:以前取材した椅子の職人さんはひたすらやすりがけしたり、切ったりするんで寅壱の作業着が防塵的に調子いいみたいな話もありました。あと洗濯後の着回しがいいとか。
R:僕なんかも、ひたすらチェーンソーなんで粉まみれでした。ホント、純粋に作業着として2超が好きですね。
Q:当時、ファッション的にはスキニーなのが流行っている中で、作業着としてだけどフォルムはあえてそっちの方に行ったのはやっぱりいいですね。
R:僕、世代的にはDickiesや腰パン世代なんですよね。まぁあと、ここらへんは昔は暴走族はいっぱいいて、その人たちも着ていたんで、好きっていうか、かっこいいななんて思ったんですけど、自分がその年齢になると全くいなくて、ゼロでしたね。
Q:(暴走族がいたのは)何歳くらい上の世代だったの?
R:4−5 歳上の世代ですかね。いまだと45歳くらいになられてると思うんですけど。
Q:僕なんかもその世代で市川に住んでいたんですけど、よく駅の壁やらいろんなところに「SPECTER」とかの落書きありましたもんね。
R:そうですそうです。ありとあらゆるところにありましたもんね(笑)いざ自分がその世代になるとホントいなかったんで。さみしかったですよね。
Q:高校のころってヤンチャだったの?
R:全然。マジメです。
Q:聞いたところ、千葉でも指折りの進学校だものね。話は少し変わるけど、高校の時に芸術家になろうって決めたの?
R:そうです。高3の時に美術予備校に通い出しましたね。最初は理系志望で、ロボコンとか、ああいうの出たいなって思ってました。物作るのは好きで、特にテック系のことが好きでしたね。あとは乗り物好きなのもあって。
Q:芸大は現役ではいったの?
R:いやいや、2浪しました。というのも高3から志望したので遅かったんですよね。部活も結構ガチで水泳部でやってましたし。
Q:大学入って彫刻科に行ったと。
R:やっぱ立体が良かったんですよね。
Q:なんか、大学入ったらクレーンを使いたかったとかという話も耳にしましたけど。
R:いやぁめっちゃいいんですよ。だって東京のど真ん中で、すごい広い部屋でクレーン使えて年間50万円でしょ?安いですよね。月で割ると月5万円以下で使いたい放題だし、学校出たらアトリエ借りるのだけでもう大変だったりするんでいい学生時代でした。
Q:大学在学中にナンヅカさんとかは関わりを持った感じなんですか?
R:はい。大学にいる間に、ギャラリーには入りたいなと思ってました。
Q:明確にそういう意思は持っていたんですね。
R:もうプロになりたくて、いろいろなところに作品の写真送ったり、とにかくこれで食っていこうって思ってましたね。
Q:そういえば名刺に新宿のシェアオフィス?の会社の名義もありましたけど、これも経営しているんですか?
R:あ!(笑)あれは友達が新宿にビルを持っていて、空いたスペースフロアがあるのでなんかやろうよって話になって。そのときシェアオフィスのはしりみたいな感じでやろう!ってなりました。2011年でしたね。当時は東日本大震災だったので、日本列島を囲んでみんなで仕事が出来る場所を作りたい…ってなって、日本列島型のテーブル作りました。
Q:それは今も続いてるの?
R:続いてますね。当時は共同設立者って名義でやってました。28歳くらいでしたね。僕は彫刻に集中したいからってことで抜けました。
Q:青年実業家だったんだね。
R:10年前は社長やってました(笑)
Q:今現在開催中の個展だったり、それに続くものだったりについても聞かせてください。
R:今回の個展はみんなに見て欲しいですね。2Gと3110NZでやるんですけど、カラーが違うんです。
Q:と言うと?
R:2Gの方は立体作品で結構しっかり彫ってて、3110NZの方は平面作品で未発表のものが多くて。6点くらい出してます。あと2Gの方ではソフビのフィギュアと、寅壱さんとのコラボの服も販売してます。
Q:パルコで作業着…てのも新しいですよね?
R:ファッションか作業着かって明確に定義してないですけど、作業着としてだったらパルコにそんなお客さん来るのかな?って感じですよね(笑)あと海外も多いですね。
Q:どんな国でやるの?
R:いろいろで、ヨーロッパや中国が多いですよね。いまちょうどイタリアのギャラリーとインスタコラボしていて、10月くらいに個展をやるかと思います。
Q:それはバーチャルじゃなくてリアルで?
R:リアルですね。イタリアのミラノでやる予定です。あと年末に、フランスのギャラリーからエディション作品を出します。結構SNSで見て連絡くれるケースも増えてますね。
Q:だいぶグローバルですね。日本国内でもホテルとかの展示もちょいちょい見ますよね。
R:最近はホテルだけじゃなくて企業さんのエントランスの展示とかもやらせてもらったり、ホテルの部屋の内装だったりもやらせてもらったりしてます。
Q:内装もやるんですか?
R:やらせてもらってますね。たとえば京都の「BnA alter museum」ってところでアーティストのコンセプトに合わせた客室を作る企画があって、五円玉を大量に展示する部屋(goen no ma)をデザインしました。全面五円玉で、宿泊客も参加して貼るみたいな。
Q:五円玉好きなの?
R:好きですね、なんかいいじゃないですか(笑)金色だしご縁があって。他にも、鶴岡アートフォラムというところで、大量の5円玉をベルトコンベアで運んで金色の滝を作るという作品を作りました。
Q:筋金入りだね(笑)
R:その時は一億円分の五円玉が必要で、日銀に連絡をしたら、日本の経済活動に支障をきたすくらいなこと言われて一億円分は断念して、山形の隣の秋田の日銀の支部には200万円分ならでも集めれるということになり、全部くださいってなって200万円分で作品を作りました。
Q:それでもすごい量だよね?
R:ええ。なかなかの量でした(笑)まぁ一億円分集めたら75トンなんで美術館の床が抜けるって話でしたしね。そもそも五円玉の日本での作ってる量も少ないみたいで、年間でそんなに無いみたいですよ。
Q:いやぁまた是非チャレンジして欲しいな(笑)
R:はい、いずれはやりたいですね。一億円分。
Q:じゃあ最後に、またもうちょっと寅壱とのコラボレーションプロダクトについて伺います。今回のプロダクトは超超ロングとベストのセットアップだと聞いていますが、白のプロダクトは見ましたが、他のカラーもあるのですか?
R:黒もあります。
Q:個人的には「故障中」って赤いボックスのコピーが気になってたり。アイテムのセレクトについてはスムーズに行った印象だけど実際はどうでした?
R:2Gの方に「寅壱だったら超超ロングですよ。」って言ったら、早速、超超ロングになってました(笑)
Q:寅壱からしても「作業着じゃなくて、ファッション的に2Gでやるのになんで?」ってなってて。どストライクすぎてて(笑)まぁ、すごく嬉しいことなんだけど。
R:笑
Q:鳶装束系のプロダクトには思い入れがあるし、いずれはなにかコラボをやって、寅壱のヒストリー的なところに触れて欲しいななんてのもあったので。
R:最初にやれて光栄です。
Q:まだ企画段階なんだけど、本格的に、日本の70年代とか80年代をモチーフにしたインスタレーション作る企画やりたいなと思ってるんで、その時は…
R:是非僕も参加させてください(笑)
Q:その時は例の車(大平氏の新車)も是非に(笑)
R:乗り込みます!
O:はい、絶対に声かけます(笑)