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The Recommendation from 寅壱 #13 QN a.k.a. Young 親方

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職人とアーティスト、二つの顔を持つQN aka Young親方。屋根の上で汗を流し、音楽で自分を探求するQN氏に、自身の職人としてのルーツや、今後のありかたなどさまざまな角度からのインタビューを試みてみた。

職人としての始まりと成一の由来

── まずはお名前とプロフィールからお願いします。

QN:QN aka Young 親方(キューエヌ)です。屋号は「成一(なりいち)」です。本名が「かずなり」で、最初に入った板金屋「成優(せいゆう)」で3年見習いをして独立したときに、成優の「成」とかずなりの「一」で「成一」にしました。

音楽から職人の道へ

── 職人とアーティスト活動では音楽が先だったんですね。

QN:そうですね。音楽は20年以上やっています。若い頃は音楽に全振りしていて、職人仕事には全く興味がありませんでした。暑い現場で作業着着て仕事なんて自分じゃない、と思っていましたね。

── それがなぜ職人に?

QN:その時、お金を稼がなくっちゃいけないって時期でもあったし、なによりもものづくりに興味が出てきたんです。家づくりやインテリアに惹かれて、弟に相談したら板金屋を紹介してくれて。それが相模原の「成優」という会社でした。普段からバスパン履いて、なんかストリートっていうか、社長がすごくファンキーで、見習いの後にすぐ独立という話で始まりました。

ヤナさんという存在

── 見習い時代の思い出はありますか?

QN:やっぱり「ヤナさん」ですね。73歳の職人で、僕にとっては師匠以上の存在です。最初は屋根に登るのが本当に怖くて、何が危ないのかもわからなかったけど、ヤナさんが「俺が教えるから大丈夫だ」って。手取り足取り、本当に丁寧に教えてくれました。

── ヤナさんはどんな人だったんですか?

QN:見た目は昭和の職人そのもので、いつも鼻水垂らしていて汚い恰好(笑)。でもめちゃくちゃ優しくて、いい人でした。仕事も早いし、的確だし、73歳でも毎日現場に来て、朝5時半の八高線に乗って当時僕が住んでいた原当麻(相模原市)まで来るんですよ。僕が寝坊した日も、原当麻駅から家まで30分かけて歩いてきて、家の前まで来てくれるんです。「お兄ちゃん、早く行くぞ」って。

── かなり支えてもらったんですね。

QN:そうですね。ヤナさんがふとしたことで運転免許を失効してしまって、一旦職人を辞めそうになったんだけど、僕が運転手になることでなんとか繋がって、そこからは、1年以上毎日一緒に現場を回っていました。僕が独り立ちした後も、何度も新人と喧嘩して戻ってきて「やっぱお前じゃないとダメだ」と言ってくれたんです。最後の一年間は「俺の引退までにお前を稼がせてやるから」って言ってくれて、本当に稼がせてもらったし、仕事の心構えも叩き込まれました。

── 今も連絡は?

QN:最近酔っ払って電話したんです。「元気してますか?」って聞いたら「お兄ちゃんまだやってんのか、すごいな」って言ってくれました。もう76歳くらいですが、まだ現場にいるみたいです。昭和の人の強さというか、あの世代には本当に頭が上がらないですね。

寅壱との出会いのエピソード

── 寅壱との関わりはどういうきっかけで?

QN:最初はDJの友人のオカモトレイジくんの紹介です。コロナ禍のとき、海外でレイジくんがコロナに海外で罹患して、予定日に帰国できなくなくなった代わりに寅壱のイベントに呼ばれたんです。そこで寅壱の方々とは仲良くなりました。

── 印象的なエピソードですね。

QN:そうですね。仕事でも寅壱を着ているので、そんな寅壱に声がかかったのがまさか音楽でなんて思いませんでした。

── 音楽活動との両立について少しお聞かせください。

QN:職人の仕事と並行して、音楽もずっと続けています。どちらも自分にとっては表現の一つですね。

── 今はアルバムを制作中とか?

QN:はい、日々制作してます。メロディーや歌詞をボイスメモに残したり。音楽は自己探求でもあるし、日常の中で感じたことを表現する場ですね。逆に、それこそ若い頃って良くも悪くも目立っていくことが勲章みたいなとこがあったんですが、逆に今は「普通」ってすごいんだなって。

── 「普通がすごい」という価値観の変化があったと?

QN:ありますね。目立つ行動が注目される世の中だけど、毎日家族を養っている職人や母親、配達員の方がよっぽどすごいと思います。そういう当たり前の尊さを表現したい。

ペルチェの使用感と現場の暑さ対策

── ペルチェについても聞かせてください。使ってみてどうですか?

QN:正直驚きました。以前お試しでなんとなく買ったものは一日で壊れて、「こういうのはダメなんだろうな」と思っていたんですが、今回のペルチェは全然違いました。接触面積も広いし、しっかり冷えます。

── どのあたりに当てるのが効果的ですか?

QN:僕は首に1つ、脇に2つ、あとはバランスを見て腰や背中につけています。首や脇のリンパを冷やすと体感が全然違います。特に11時から14時の一番暑い時間帯に効きますね。

── 現場によっても違いますか?

QN:都心やコンクリートの現場は本当にきついです。風がないし、熱が戻ってくる。マンションの室内もクーラーが効いていないので地獄です。でも、ペルチェがあると体感温度が半分くらいになる。空調服と併用するとさらに快適ですね。

── 改善してほしい点などは?

QN:もし可能なら、もう一箇所くらい冷やせるポイントがあれば嬉しいですね。でも今のでも十分満足しています。今年は特に暑いみたいなので、必需品です。

最後に

── 職人としてももっと規模が大きくなる、例えば会社にして弟子を取るみたいなことは考えていますか?

QN:じつはあんまりそういうところまでは考えていなくて。なぜなら、一人でやるっていうのが自分であっているし、自分にとって現場ってそれぞれのプロがセッションするみたいな感覚をもっていて。作業しながらやっぱりついつい色々考えてしまいます。

── アーティストならではの感覚ですね。

QN:さっき話した「普通」ってやつを噛み締めながら、いまは音楽を作ってますね。

── 職人としてもアーティストとしても、これからも楽しみにしています。どちらも華があって厚みのあるカルチャーだと考えています。

QN:ありがとうございます。まだまだ模索中ですが、時にはヤナさんに教わったことも胸に、仕事も音楽も続けていきます。

QN a.k.a. Young 親方

"Singer songwriter & roofer" 職人とラッパーの二つの顔を持つ屋根職人。板金屋「成優」で修業後に独立し本名と合わせた屋号「成一」を名乗る。音楽活動歴は20年以上に渡る。

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