The Recommendation from 寅壱 特別企画:村上貴章 × 小島鉄平
“現場”と“カルチャー”をつなぐものづくり。現場から生まれるリアルと、カルチャーとしての表現。
「TRADMAN’S TORAICHI (寅松)」は、その両方をひとつにした“現代の作業着”であり、日本の職人文化と新しい美意識をつなぐ象徴だ。
TRADMAN’S BONSAI × 寅壱の協業から、次の世代へと続く“新しい伝統”がまたひとつ、芽吹こうとしている。
出会いは2019年の渋谷
村上貴章(以下、村上):今日はよろしくお願いします。あらためて思うと、もうだいぶ長い付き合いになりましたね。初めてお会いしたのは……2019年でしたっけ?

小島鉄平(以下、小島):そうそう、2019年。もっと前から知ってるような気がしてたけど(笑)。確か、渋谷の居酒屋で、共通の友人が主催した食事会でしたね。いろんな人が集まってて。
村上:ああ、メリケンバーバーの結野社長に誘われて行った会ですね。そこで鉄平さんと初めてお話しして。あのときは僕、酔っ払いすぎて全然ちゃんと話せなかった(笑)。
小島:覚えてる覚えてる(笑)。でもそのあと、ちゃんとあらためてコミュニケーション取るようになって。僕のことはその前からSNSとかで見てくれてたんですよね?
村上:そうなんです。盆栽をこんなふうに表現してる人がいるんだ、って衝撃でした。あと義理の兄が別の展示で鉄平さんの作品を見ていて、「これ、すごいよ」って言ってたんです。
コロナとDaniel Arsham、そして“和”の感性
村上:ちょうどそのころ、僕らがダニエル・アーシャムとのコラボを進めていて。本来は海外でのプロモーションの撮影になるはずが、コロナの直前で状況が変わってしまったんです。でもダニエルが“和の美意識”にすごく興味を持っていて。そこで鉄平さんを紹介して、「一緒に何かできたら」とつないだのが最初のきっかけでした。
小島:あれは本当に印象的でしたね。当時はまだ自分のギャラリーもなくて、大宮の盆栽センターでメンテナンスをしている場所で撮影をしました。懐かしいです。
今ではダニエルもさらに世界的になったけど、当時から刺激を受けてましたし、その後も日本に来るたびに連絡をくれて、作品の交換をしたり。年も同じなんですよ。

そこからいろんな仕事でご一緒させてもらうようになって、カタログ撮影でも登場させてもらいましたよね。あれをきっかけに当時のカメラマンとも仲良くなったし。
村上:はい、そしてしばらくして「寅松(TRADMAN’S TORAICHI)」のグラフィックロゴを作って、今につながっています。
小島:あのロゴ、本当に評判いい。あのあたりから具体的にアパレルラインをやってこうって意識が高まりましたね。

鳶服とスーツ文化の融合
村上:あるとき社内の工場を歩いていたら、昔の鳶装束で使っていたストライプ生地を見つけたんです。それがすごく“仕立て服”っぽくて。実は昔、鳶職の人たちってスーツ屋さんに仕立ててもらってたんですよね。
小島:え、そうなんですか?
村上:はい。職人さんって誇り高くて、給料も良くて、身なりにこだわる文化があった。だからスーツ生地で鳶服を作っていた時代があるんです。その精神がすごくかっこいいなと思って。
それを現代に再解釈して、鉄平さんやTRADMAN’S BONSAIの品と色気に合うものを作りたいと思いました。
小島:実際に一年間うちの頂いたサンプルをスタッフに履かせてテストしたんですよ。汚れにくい、シワにならない、ヘタらない。完璧でした。出張や飛行機でも14時間座っても全く崩れない。醤油が跳ねても拭けば落ちる(笑)。



機能性も見た目も両立していて、本当に感動しました。
村上:そう言ってもらえて嬉しいです。鉄平さんはサンプルの段階から細かくフィードバックをくださって、改良を重ねながら完成形に近づけていきましたね。
小島:わがまま言いました(笑)。でも出す以上は納得いくものにしたくて。結果、本当に良い服になった。


ディテールも“寅松”の三本松刺繍を入れたり、幸福を呼ぶ松をモチーフにしたり。そういう“想い”の部分も詰まってます。
作業とストリート。両方をつなぐ服
小島:僕らのコンセプトは、仕事のまま街に行けるユニフォーム。作業して汚れても拭けば綺麗になる。仕事終わりに会食やパーティーにも行ける。
“オンでもオフでも通用する作業着”を作りたかったんです。
村上:まさに今回のセットアップがその体現ですよね。
ニッカの要素を残しつつ、シルエットはより現代的に整えて。腰回りの楽さとか、鳶服特有の理にかなった構造も再解釈しました。

小島:そうそう。あの腹回りのフィット感は本当にクセになる(笑)。あれは理屈じゃなく体でわかる。
村上:そこまでハマってくれて嬉しいです(笑)
小島:僕、10代の頃は現場で働いてたんですよ。寅壱の服が欲しくても高くて買えなかった。でも頑張って初めて買って着たときのあの誇らしさ。作業着って、日本を支えてきた職人たちの戦闘服ですよね。その象徴が寅壱だと思ってます。
そこに今、TRADMAN’S BONSAIとして関われていること、本当に光栄です。
村上:こちらこそです。本当に、最高のご縁をいただけたと思います。
京都・祇園に「美術・古物 × 盆栽」の新ギャラリー
村上:さて、最近の話をすると……京都で新しいプロジェクトが動いているんですよね?
小島:そうなんです。もともと「東は丸の内でやっているとして、西はどうしようか」と考えていたときに、うちのお客さんでもある方とご一緒する話になって。
「美術・古物と盆栽」をテーマにしたギャラリー的な場所を、京都・祇園でオープンする予定なんです。今ちょうど工事中で、うまくいけば2月、できれば2月11日の建国記念日にオープンできたらいいなと。
村上:祇園で盆栽と古物って、もう響きだけで大人ですね。
小島:営業時間や運営スタイルは、今まさに詰めているところなので、まだ詳しくは言えないんですけど、かなりいい空間になりそうです。
昔ながらの町家が並ぶエリアの中に、ちょっとだけポツンとある古い平屋で、しかも珍しくコンクリート造なんですよ。
村上:京都でコンクリって、ちょっと意外ですね。
小島:そうなんです。もともとお客さんが持っていた建物で、そこを改装して、暗がりの中に盆栽がポツンと置かれていたり、茶器や竹のしつらえがさりげなく光るような、「大人の暗がり」みたいな空間を目指しています。
寅壱の近況
小島:そして、来年いよいよ会社を継ぐって聞きました。本当に自分のことのように嬉しかった。
村上:ありがとうございます。正直、怖さもありますけどね(笑)。父からはずっと「10年、15年は下積みだぞ」と言われていて、23歳で直営店に戻って、今35歳。あっという間の10年ちょっとでした。

小島:まさに“修業期間”を経てのバトンですね。
村上:ありがたいのは、寅壱で動き出してから本当にいい出会いに恵まれたことです。鉄平さんをはじめ、兄貴分のような先輩たちが多くて、皆さんが奮闘している姿を見ることで、自分の立ち位置を考えさせられる機会が多いですね。
「古きを守り、新しい風を吹かせる」という使命感
小島:“寅壱アーカイブス” や ”寅壱コンセプト” が立ち上がった頃から、寅壱の動きがガラッと変わったじゃない? それまでとは違うアプローチで、「寅壱、こういうこともやるんだ!」って驚いた。
村上:ありがとうございます(笑)。古き良きものを守りながらも、自分たちの世代として新しい風をどう吹かせるか、日々試行錯誤しています。

小島:僕らの盆栽も、「古いものを未来にどうつなぐか」が根幹にある。だからすごく共感します。
村上くんが次期社長になると聞いたとき、本当にワクワクしたし、これからの寅壱がますます楽しみです。
村上:改めてありがとうございます。来春には正式な形の発表も予定しているので、ぜひ一緒に盛り上がってください。
小島:もちろん。その日は色々協力させてください(笑)。
父になって、家庭に“育てられる”感覚
小島:それにしても、お互い子どもが同い年でね。
村上:そうなんです。2024年の8月生まれで、3日違いなんですよね。
小島:そんな偶然、なかなかない(笑)。
村上:会社では誰かに怒られることはあまりないけれど、家庭はフラット。子育てや夫婦の時間を通じて、「自分が育てられてる」感覚がありますね。
小島:わかります。僕も子どもに「パパ、今日はテレビに出てないの?」って言われます(笑)。
でも、そういう日常があるからこそリセットできる。家庭に育てられている感覚って、ほんと大事。

村上:その価値観は、鉄平さんとすごく共有している気がします。家族ぐるみで仲良くさせてもらっていて、本当にありがたいです。
小島:こちらこそ。これからもよろしくお願いします。
村上:こちらこそ、末永くよろしくお願いします。
今回のインタビューの中で紹介されたTRADMAN’S TOTAICHI 商品のご購入は以下でご購入が可能です。
-SHOP-
寅壱神田 (〒101-0042 東京都千代田区神田東松下町31−1)
TRADMAN’S TOKYO
Valley
-EC-
Toraichi archives (https://archives.toraichi.com)
TRADMAN’S BONSAI ONLINE (https://onlineshop.tradmans.jp)
Valley ONLINE (https://valley093.jp)
プロフィール
村上貴章
2012年に株式会社寅壱に入社。祖父は1959年に寅壱の前身である村上被服店を創業。営業、商品開発(企画室)を経て現在は専務取締役に就任。
2019年より始まった、”Toraichi archives” のプロジェクトリーダーであり、様々なコラボレーションを実行しながらワークウェア業界における新たなブランディングの道筋を作った。
小島鉄平
株式会社 松葉屋代表取締役、「TRADMAN’S BONSAI」プロデューサー、盆栽職人。
2016年に株式会社松葉屋を創業し、「伝統とは革新の連続である」というスローガンのもと破竹の勢いで業界の垣根を超え、様々な業界に多大な影響を与え続ける。現在、東京 丸の内に「TRADMAN’S TOKYO」をかまえ、来年度には京都の祇園にて「TRADMAN’S KYOTO」を出店予定。

